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応援団やサムライうさぎについて。あとはアニメ三国演義の歪曲感想とか。

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 行ってきたよ、長野。福島鉄平てんてーの出身地でございますわね。
なんせ遠かった……。マチカさんの地元から名古屋まで行って、そこから美術館のある飯田市までは高速バスを使ったんだけど、バスに乗ってる時間のほうが長かった。長野県は広いから、巡ろうとするとえらい時間がかかる。

 長野は「ああ、旅行に来たんだな」と強く実感できる場所だった。
 まず寒い。普段、腑抜けた気候の地方で暮らしているため、長野県の人にとっては、こんなの寒さのうちに入らないというレベルの気温でも、マチカさんにとっては真冬なみの寒さに感じられた。それなのに長野の女子高生はスカートがやけに短い。寒いのに元気だ。
 あと景色を見渡すと、かならず高い山がある。マチカさんが暮らしている場所は平野がダラダラと続くところだ。あんなふうにここは平野、こっからは山、とメリハリのある土地は新鮮だった。そんで山は冠雪してんの。雪なんてめったにお目にかかる機会がないから、それだけでスゴイなあと浮かれる光景。

 そして最大の目的である川本喜八郎人形美術館。
「美術館はこの先二十メートルを左折」の案内看板を見ただけでもテンションが上がった。日本における三国志の登場人物のなかの一番人気は孔明さまだと聞く。
 聞くまでもないですけどね。
 だからなのか美術館の案内には孔明さまがフィーチャーされてる。

 観賞用と保管用のパンフレット

 まずここで一礼をしましょう

 そしてドキがムネムネしたまま美術館のドアを入ると、真正面で孔明さまがお出迎えしてくれる。

 ここでは土下座で拝謁しましょう

 これが、また粋なのよ。
 玄関のドアは真っ黒で向こうが見えない。一番始めの半円状のドアが開くと、また半円状のドアがある。ちょうど円柱のなかにすっぽり入るかんじ。照明も薄暗い。で、二枚目のドアが開くと、まるで舞台の幕が開くかのように、孔明さまがバーンと登場するのだ。
 まさに、人形劇のはじまりはじまりーといった具合。実際、そういう意図があるのかどうか、凡人のマチカさんには分かりませんが、とにかく盛り上がる演出じゃないか。

 目に入った瞬間、思わず「おったー!」と叫ぶと、受付のお姉さんに「……フッ」と鼻で笑われたけど気にしない。孔明さまがまぶしすぎて目がつぶれるかと思った。
 ギャラリーは撮影不可ですけど、お出迎え孔明さまだけはOKなんだよ。せっかく来てくれたのに撮影不可だとかわいそうだから、と川本先生が撮影用に作ってくれたんだってさ。ありがたく撮影させていただきました。以前はおでむかえ関羽もいたらしいけど。

 おでむかえ孔明さまは、人形劇の孔明さまよりも表情に威厳と貫禄がありますね。きっと、丞相時代の孔明さまだね。羽扇をしっかり握らずに、ちょっと手に乗せている様子が、なんだか貫禄と威厳のなかにもリラックスしたかんじを受ける。
「よく来ましたね。まあ、ゆっくりしていきなさい」とでも言っているように見える。もしくは「ようこそ、わたしのかわいいマチカ」。
 どうだい狂っているだろう。マチカさんのテンションは天井知らずやでえ。
 でも、しょうがないじゃないですか。子供の頃、本気で恋いこがれてお嫁さんになりたいと思ってたんだから。
 いや、今でも結婚してくれと思ってますけど。
 孔明さまの背後に見えますものが、天下の名文出師表。

 臣亮言……

 これ、以前写真で見たときは木か竹に書いたものを展示してんのかと思ってたけど、実際は布に印刷してあるタペストリーだった。

 そんでギャラリーに入ると、人形劇で見た、あの孔明さまとご対面ができました。
 どのお人形も予想より小さかった。(テレビ用だから?)たぶん、この感想は見た人の大抵がもつ印象なんじゃないだろうか。頭なんて握りこぶしよりも小さい。造形や衣装を細部まで作り込んであるから、小さくても堂々と立派に見えて、実物よりも大きく思えてたんだろうね。

 撮影禁止なのでポストカードから

 孔明さまは本当に美しい。三国演義のアニメの孔明さまだって、もちろん美人だけど、マチカさんの孔明像は、やっぱり人形劇の孔明さまであって永遠の一番。至今恋恋不忘。
 いつも深く思惟しているような愁いを帯びた表情にはため息しか出てこない。このお人形は凛とした強さと、はかなさという相反するものを併せ持ってんだよね。でも、どっちも人の心の琴線に触れる美しさであるわけで、ひとことでいえば愛してる。

 孔明さまのことばかり書いてますけど、他のお人形もちゃんと見て来ましたよ。

 みんなのアイドル曹操

 曹操は迫力があったわあ。
 美術館の人が、いろいろ教えてくれたんだけど、ほとんどの人形は頭(カシラと呼ぶらしい)に仕掛けが二つ付いてるそうです。口を動かしたり、まゆげを動かしたり出来る仕掛けのことね。それが曹操は瞳を左右に振る、ひとつの仕掛けしかないんだってさ。(孔明さまは口の動きと、まぶたを閉じる仕掛けのふたつ)それでも曹操がギロッと睥睨するだけで、怒りであったり、抜け目のない狡猾さであったり、酷薄さが表現できるんだね。それを他の人形よりも、一見福福しい丸っこい輪郭におさめることで、曹操という人間の得体の知れなさがより伝わってくる気がする。
 そんな曹操が今や幸楽でラーメン作ったり、野草をテンプラにして食ってんだから、世の中なにがあるか分かりませんね。曹操の中の人の話ですけど。
 逆に張飛は陽気なお調子者だから表情がよく動く。眉毛がハの字になる仕掛けがあって愛嬌たっぷりだ。
 でも曹操の仕掛けはひとつですけど、口をヘの字にしたものと、パカッと開けた、ふたつのカシラがあるそうです。
 あと人形の衣装を替えるときは、服を着せ替えるのではなくて、あらかじめ衣装を着せてある胴体に、カシラを載せ替えるんだそうです。一番の衣装持ち(胴体持ち?)は劉備で15もあるんだって。
 この衣装についても教えてくれたんだけど、おもに着物の帯で作ってるそうですよ。それと人形の足元。武将はブーツみたいなのと、文官はつま先が反ったスリッパ的なものを履いてるんだけど、これは全部デザインが違う。ひとつも同じものがないんですよ、と言ってた。足元なんて、なかなかアップにならないから、同じものをたくさん作っておいてもいいのに、そうしない。
 三国志ではなくて平家物語の人形の話になるのですが、よく見れば上半身の(鎧の下の)左右で着物の模様が違うんですよね。これは当時の武将は弓をうちやすくするために、片方を脱いでたんだそうで。だから一枚下の着物が露出するので、見える柄が違う。しかも脱いでも袖が邪魔にならないように、背中に回して鎧の下で止めてあったところまで、忠実に再現してあるそうです。
 こだわりというか執念というか、川本先生の人形作りに対する一切妥協しない姿勢がすごい。大作家たる所以だ。
 あ、だけど「武将の鎧の肩パット(なんて呼ぶのか知らない)部分が、装飾する前はなんの素材で出来てるか分かりますか?」と聞かれて、一秒で「分かりません」と根を上げたら「スーパーで売ってる肉や魚のトレーですよ」だってさ。
 軽いし加工しやすい。まさに臨機応変やでえ。
 いや、軽量化というのは人形操作のうえで非常に大事な部分なのだ。操作する人はセットの下にもぐって、人形を高く持ち上げて動かすからね。想像しただけで腕が疲れる。ていうかギャラリーには実際に触ってもいい人形が置いてあるんだけど、真似してみたら真っ直ぐに立たせることが、まず難しかった。演者さんもすごいね。

 三国志の他のお人形だと、やっぱり周瑜と趙雲が男前だったー。キリッとした表情であり、目の縁に赤いラインも入ってて色気があった。そういえば曹操だけ目の縁に青いラインが入ってた。アレはなんなんだろう。美術館の人に聞けば良かった。
 あと意外にも、孔明さまのお兄さんのお人形も展示してあったよ。諸葛瑾。
 それと荀イクがお年寄りじゃなかったから「あれ?」と思ったけど、お人形の説明ボードに「放送では老人だったけど、展示するにあたって若者にした」と書いてあった。たしかに、もともと曹操よりも八つ(だっけ?)年下にもかかわらず、なぜかお年寄りになってたんだよね。

 残念ながら呂布はいなかった。いまの展示が平家物語を中心にしてるから、三国志のお人形は少ないのだ。
 呂布のポストカードだけは購入。

 方天画戟持っていいポーズ

 戦袍と鎧がド派手。写真だと分かりにくいですけど、緑の戦袍の裏地が赤なんですよね。おしゃれさん。華がある。ポストカードの張飛はなぜかイノシシを背負ってた。そんな場面あったっけ。うーん買っとけばよかった。

 展示替えして、また三国志の人形が増えたら行きたいな。地図が読めない方向音痴のマチカさんですが、一度行ったから、今度はひとりでも行けそうだし。入館料も400円で良心的。ひとごとながら、こんなに安くて採算が取れるのだろうかと心配になる。

 お人形を目の当たりにすると、パンフレットに書いてある「人形はその役のためだけに生まれてきて、演じているとき、その生命は花ひらき、終わると微かな生命にもどるひたむきな存在」という文章が実感できる。
 演じているあいだは、生き写しの彼ら。退場後は眠りにつく。そうして、それぞれが抱いていた夢を、今も静かに見続けているようだった。
 いやー、行ってよかった。
 次は孔明さまのお墓参りだね。こればかりは余裕があったらで済む旅じゃないけど、いつか行けたらいいな。
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