はじめてのプロポーズ

　職場でだべっていたら、ひょんなことから後輩の穂波くん（たった今自分の趣味でつけた仮名）が前職は調理師だったということが判明。
　マチカさんは料理センスのなさに自分で呆れて以来、簡単な料理以外は手をつけず精進もしないと決めているので「すげえじゃん」と純粋に感心して褒めそやした。その流れで「ほんなら穂波くんは私のシュフになってよ」と冗談で言った。直後に周囲から「マチカさん、シュフじゃなくてシェフでしょ」と突っ込まれた。そして「シュフて。嫁になってもらいたいんか」とも。
　で、言われてから間違いに気付いたマチカさんは、なんだか恥ずかしくなって「へっへ。プロポーズしたみたいになったなあ」とこれまた冗談で言うと、周囲はこのウッカリ屋さんめ、みたいな感じで笑ってくれたのですが、なぜだか穂波くんだけかなりの困り顔でした。

穂波どのは何故笑わぬ。

まして本気で嫌がるとは何事ぞ。

　冗談でも笑えませんか。そうですか。
　……マスター。キツいお酒ちょうだい。今日は飲みたい気分なの。