もうだめかもしれない

　神経が張りつめて、頭がどうにかなりそうです。

　今日部屋に帰ったら、超でかいクモがいたんですよ。マチカさんはクモが嫌いで嫌いで嫌いでしかたない。本当に怖くてしかたない。
　それなのにこの世の物とは思えないデカさのクモがいたんです。見た瞬間は叫び声も出なかった。それから腰砕けになりながら両親のところへ飛んで行ったんだけど、時間が遅かったせいもあり、父親は「あほらしい」とベッドへ戻ってしまい、母親もめんどうそうな顔をするだけだった。そこをお願いだから退治してくれ、と拝み倒すと母親が掃除機で吸ってくれることになった。
　マチカさんは怖くて部屋に入れないので、母親だけが対処に行ったんだけど、しばらくして帰って来て「取れたかどうか分からん」ですって。
　それでは不安なので掃除機の紙パックのなかを確認してくれ、と土下座する勢いで頼んだ。すると渋々見てくれたのですが答えは「おらん」だった。

　マチカさんは、親の前で泣いたことって子供のとき以来ないんだけど、この時ばかりは泣き崩れた。ボロ泣き状態だったので、飼ってる犬がオロオロしてマチカさんの前をうろつく。
　さすがに気の毒になったのか、ようやく母親が慰めてくれた。
　半笑いで。そして「そのうちおらんようになるやろ」と寝に帰った。
　なにも解決してねえ。

　たぶんアレはアシダカグモってやつだ。
　いや、知ってんのよ。そいつが害虫を食べてくれる益虫だって。だから殺さない方がいいと言われてるって知ってる。でもあんなやつと一緒に暮らすぐらいなら、ゴキブリと共存したほうがまだマシだ。
　理屈の上では分かってるけど、理屈抜きで怖いんだよ。なんで誰も真剣に取り合ってくれないんだ。心配してくれてんのは犬だけじゃないか。

　ひとりでぼんやりしてると神経がおかしくなりそうなので、こうして日記を書いたりしてんだけど、物陰にあいつがいると思うとイライラして落ち着かない。そのせいか分からないけど、あれから体がかゆい。ずっとかきむしってる。あちこち真っ赤だよ。

　どうしよう。
　もう、みんな燃えちゃえばいいのに。そうすれば楽になれるのに。
　そんな破滅的な考えしか浮かんでこない。
　あした絶対バルサン買ってこよう。あんな大きな虫にもきいてくれればいいけど。