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応援団やサムライうさぎについて。あとはアニメ三国演義の歪曲感想とか。

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タイトルをちょっと変更。
そして前回がいい加減だったので(今もだけど)後付け設定を。
鬼龍院博士は専務の「字山」に呼ばれて、彼の執務室に来ている、という前提で読んでチョ。
ちなみに8810は「ハチハチイチマル」とお読みください。

バイオロイドというか、ヤオロイドと呼んで差し支えないtype-8810と、鬼龍院博士の物語第二章。
マチカさんは、SFの知識が全く無いのに書いてますよ〜
でもそんなの関係ねぇ。全部西園寺の柳腰が悪いんだ。

もうどうにでもなれー!


 鬼龍院はしばらく黙していたのだが、おもむろに口を開いた。
「愛玩用というのは……もし性的な目的でしたら、レンタルは違法でしょう」
 性的な目的での人造人間のレンタル及び販売はおろか、製造と改造も国内の法律で禁止されている。
「あれはアンドロイドやガイノイドの、無機的人造人間にしか適用されない法律ですよ。最近になって諸外国で量産化と流通が始まったバイオロイドに関する国内の法律は、まだその整備を急ピッチで進めている段階だ」
「でもその内、必ず禁止されるはずです」
 そのために量産型のFUJI-1号は、製造過程で遺伝子を操作する事により生殖器官が無い。それは性的な目的で利用されるであろう懸念のためでもあり、人間との交配により異種混合——ハイブリッドが生まれてしまう可能性があるからだ。
 しかし数年前の段階では、バイオロイドは生殖器官を備えていても、何故か正常に機能しなかった。その課題をクリアすべく研究が進み、やがて正常に機能する生殖器官を持ったバイオロイドが完成したのだ。まだ世界中の研究機関でも、ほんのわずかしか存在しないのだが、隼人はその貴重なバイオロイドの一体だった。
「将来がどうなろうと関係ありませんよ」
 字山はにべもなく言った。
「言い換えれば、今の段階なら問題無いという事です。法律は、その実施以前の事実にさかのぼって適用されない。これは不遡及という法の原則です。だがむしろ違法である方が望ましいぐらいだ。いざという時の保険になる」
「おっしゃる意味が分かりませんが」
 違法では無いから大丈夫だと言ったかと思えば、今度は違法の方が良いとはどういう了見だろうか。
怪訝な面持ちで尋ねた鬼龍院に、字山は大袈裟に眉を吊り上げた。
「あなたは実に清廉な思想をお持ちのようだ。研究者の鏡ですね。しかし社の実務を預かる我々はそうもいきません。企業は常に利潤を求め続けなければならない。ですが、利潤というものは無尽蔵にあるものでは無い。限られた範囲の猟場で他社と獲物を取り合うのと同じです」
 その中で、と字山は続ける。
「アンドロイド産業において、グループ企業の西園寺重工は遅れを取っている。猟場の隅に追いやられて、痩せた獲物を細々と狩っている状態です。しかしバイオロイド産業は、まだ黎明期だ。そこで我が西園寺バイオケミカルが、先行量産型のFUJI-1号の発売を皮切りに、まだ開拓されていない猟場を一気に占拠する事も可能なんですよ」
「それと……8810のレンタルがどう関係あるんですか」
「我々はね、猟場に立った時の後方支援が欲しいんですよ。政界の実力者と太いパイプがあれば、色々と便宜を計ってもらえますからね。でも向こうも海千山千の政治屋だ。無報酬で支援などしてくれません」
「取り引きをしたんですか? 8810を賄賂代わりに……」
「賄賂だなんて、人聞きの悪い。ただの付け届けですよ」
 違法なら保険になる、と字山が言った意味が分かった。賄賂を受け取ったにも関わらず、相応の見返りが得られなかった時の催促に使う、強力なカードにするつもりなのだ。だがそのカードが無くとも、奸計を巡らせて今の地位まで上り詰めた字山なら、他にも保険を掛けているはずだ。その天秤が釣り合う目算があって、始めて取り引きの場に立つ。
「でも8810を駆け引きの道具に使う事は確かでしょう。しかし彼は物ではありません」
「それはどういう意味での発言ですか。資産という意味なら、物でしょう。さしずめ動産ですかね」
 軽薄な笑みを浮かべて言った字山に、鬼龍院は思わず怒りが込み上げる。
「ふざけないでください」
「では何ですか。倫理的な問題? だったら鬼龍院さん、あなたが私を責める権利は無いでしょう。バイオロイドの開発そのものが生命倫理に反している、と抗議している団体がいくつあると思っているんですか」
 それは事実だった。本社や研究所の前での抗議や、市街地でもデモが常に行われている。彼等にとっては、生命の創造は神の領域であって、それを侵すような遺伝子の操作は神に対する冒涜なのだ。
「あなた達がそんな"雑音"を気にせず研究が続けられるように、私達がどれだけ心を砕いてしているか。少しは理解して欲しいですね」
「論点をすり変えないでください。8810は感情を持った人間と同じなんですよ?」
「構成する成分が人間と98%同じ、でしょう。しかしデータを見る限り、感情など無いに等しいじゃないですか。自我もまだ芽生えていない。FUJI-1号のように、行動パターンや感情をコントロールするナノマシンを脳に組み込めばいいものを。私には、まだ疑似人格をインストールされたアンドロイドの方が人間的に見えますけどね」
「8810は誕生して間も無いんです。乳児と同じ状態なんですから、これから人と同じ多様な感情を持つ可能性はあります。教育の段階で……」
 そう言った鬼龍院を、字山は遮った。
「それはあなたの願望でしょう。科学者のあなたが希望的観測を、論拠に持ち出すとは思わなかった」
「私は科学者である前に、一人の人間として意見を述べています」
「更にその前に、一人の勤め人でいてもらわないと困ります。私は鬼龍院さんにお伺いを立てているのでは無いんですよ。決定事項の通達をしているだけだ。ただ、あなたは8810の生みの親ですからね。それに配慮して、こうして一応の礼を尽くしているだけです」
 何が礼だ。鬼龍院は怒りを通り越して呆れ果てた。
「とにかく、こんな事は間違っています」
「正しさを主張するのは自由ですが、それが自己の利益に反してまで主張された事実を私は知りません。人が正義を叫ぶ時は、それによって恩恵が預かれるという目論見が根底に必ずある。物質面、精神面。そして顕在的、潜在的に限らずね。鬼龍院さんはその恩恵を奪われそうになっているから、抗議しているんでしょう?」
「私が一体何から、どんな恩恵を受けていると言うのですか」
 字山は鬼龍院の表情を、上目遣いに窺って言った。
「まず、あなたは8810に研究対象としての存在以上の感情を持っている。噂になってますよ? 今までは必要以上に他人と口も聞かなかったのに、8810に対してはとても饒舌だと。それに普段は無表情なあなたが、8810の前では良く笑うそうじゃないですか」
「それは……」
 否定出来ない。
隼人の前では、自然と言葉が溢れる。そして表情が和らぐ。鬼龍院が自分自身でも驚く変化だった。
「鬼龍院さん、この際はっきりおっしゃったらどうですか。自分だけの可愛らしいお人形が、他人に好き勝手されるのが我慢ならないってね。あなたは8810と一緒に居ることで、今までの孤独な人生の埋め合わせをしているんだ」
 こんな大きな恩恵は無いでしょう、と言って字山は席を立った。

*****

字山→J山 応援団1の紫アフロから拝借。
紫アフロのくせに、薫様にこんな口をきくんじゃないわよ! キィィ。

しかし生殖器官が正常に機能する、だなんてどうやって調べたんでしょうか。
他人に隼人を任せないであろう鬼龍院博士ですから、きっとご自分で……。
部下や同僚を部屋から追い出して「絶対覗いたら駄目だぞ」ときつく言っておいて、こっそり調べたんだと思いますよ。
これは研究の為だから仕方無いのだ、と自分と隼人に言い聞かせて。
あぁ、目頭が熱くなりますね。

ていうか、まだ続く。
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