応援団やサムライうさぎについて。あとはアニメ三国演義の歪曲感想とか。
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赤壁の戦いは三国演義において前半を締めくくるにふさわしい盛り上がり箇所。そのなかで十万本の矢のくだりは孔明さまにとっても見せ場のひとつです。
というわけで今回の感想も長いずぇ。
番組は孔明さまが川岸に寄せた小舟の上で、夕焼けの空を眺めているところから始まります。そこへやって来たのは魯粛。
「風流でんな、孔明はん」
「ああ、魯粛ちゃん。うまくいったみたいでよかったね」
はて何のことかと魯粛が首を傾げると、孔明さまは前回周瑜が曹操軍へ仕掛けた謀略について語り出します。
「曹操を騙して、向こうの将軍を処刑させたんでしょ。謀反の疑いがかかるように仕向けてね。その将軍は水上戦に慣れた、曹操軍にとって貴重な存在だったから、今になって曹操は相当後悔してるだろうね。周瑜におめでとうって言っといて」
「へえ、おおきに。言うときますわ(この伝言なら気楽やわ)」
「ていうか魯粛ちゃん、そんな喋り方だったっけ?」
「おとなの事情っちゅうもんがありますのや」
「ふうん。それはそうと、曹操は賢いからねえ。きっと、すぐ周瑜の仕業だって気付いて、今頃カンカンだよ」
「ああ、それは周瑜はんも言うてはりましたなあ」
「ま、怒ったところで、あらたに曹操軍の水軍都督についたのは、水上戦に詳しくない将軍だからね。怖くない怖くない。あっ、このことは周瑜に言わないでね。絶対だよ!」
「なんでですのん」
「えー分かんない? とにかく言ったら駄目だからね」
ふしぎに思いながらも魯粛は孔明さまのお祝いの言葉を周瑜に伝えました。すると周瑜の表情が険しくなります。
「あの性悪猫が。なにが、しれっとお祝い申しあげますだ。どうしてあのふたりを曹操が処刑したことを孔明が知ってる? あいつは蚊帳の外だったろう。孔明は他になんて言ってた?」
魯粛は孔明さまが周瑜には秘密にしておいてね、と言った内容を伝えていいものかどうか迷います。しかし周瑜は同じ呉軍であり付き合いも長い。
ていうか曹操軍が百万だって孫権に言わないでね、と頼んだのに、あっさり約束を破った孔明さまとの約束を守る義理はない。……と考えたかどうかは分かりませんが、今までと同様に、つい内容をもらしてしまいます。
「えっと、曹操が水上戦を知らない奴を水軍都督にしたことを喜ばしい言うてた……ような……気がする……ような……たぶん」
「ファック! 奥様同士の『これ、みんなには内緒なんだけど』みたいな、ご近所さんの噂話レベルに情報が筒抜けとかありえナーイ! どうやって知ったんだよ。やはり孔明を生かしておくわけにはいかん」
「あわわ……(気楽や思うとったのに結局こうなるんかい)。周瑜はん落ち着いておくんなはれ。孫権さまと劉備が同盟を結んでんのに、孔明を殺してしもうたら孫権さまの評判ガタ落ちやないですか。今わてらの敵は曹操でっしゃろ。孔明のことはこの戦いが終わってから、ゆっくり考えなはれ」
「うむむ。しかし今を逃せば、二度と暗殺のチャンスはやって来ないかもしれないんだぞ。こんなに近くにいるのにィ、おまえを殺せないなんて〜♪ どうすればいいのさ、サムバディトゥナーイ♪ Say together!」
「La La La La La♪」(手拍子)
「Love Somebody tonight♪ And I will never neber never……」
「さっすが武勇知略だけやのうて音楽にも秀でた周瑜はんや! 心にジーンとくる、ええ歌うたいますわ。『事件は会議室で起きてんじゃない! 現場で起きてるんだ!』これしかし……って歌うてる場合かいな! 人の話は真面目に聞きなはれ」
「ユーはノリツッコミもできるんだな。頼もしいぞ」
「……とにかく孔明については、先走ったことせんといておくんなはれや」
「分かった分かった。暗殺ってバレない方法で始末するから心配ナッシング」
「全然分かってへんやん」
「はっは。ジョークさ。殺すのは無理にしても、せめて犯したいところだ」
「えっ」
「えっ」
「嫁の小喬はんに言いつけまっせ」
「えっ」
「えっ」
「何それ、怖い」
そんなやり取りの後で周瑜は呉軍の水上訓練の様子を孔明に見せます。甘寧かっこいい。揺れる船の上から矢を次々と的へ命中させて行きます。
腹に一物、ついでに下半身にも立派な一物を持つ[要出典]周瑜が孔明さまに話しかけます。
「どうだい、我が軍の精鋭達は」
「すごいね」
「はー。いっぱい矢が欲しいなー」
「なんなの、いきなり」
「いっぱい! 矢が! 欲しい! なー!」
「いえ、聞こえなかったわけではないので大声で言い直さなくても結構ですよ」
「オーケー、矢はいくらあっても多過ぎるということはない。あればあるほどいい。というわけで孔明は矢を十万本集めたまえ」
「脈略がないにも程があるけど、いいよ」
「ええんかい!」
つっこまずにはいられない魯粛。周瑜は十万本の矢の調達という無理難題を吹っかけて、失敗したあかつきには、孔明さまを処刑する言い訳にするつもりなのですから。
そんな嫌がらせとしか言いようのないお願いを受けた孔明さまは、十人のうち十五人がイラっときた(即座に全員がイラつき、うち五人は後で思い出してもう一度イラっときた)という渾身のムカつく顔を披露します。
孔明さま「十万本? いいよォ」
背後の魯粛も「なんちゅう顔や」と引き気味ですね。しかしさらに後方の兵士達はよく訓練されているのか、イラっときていても無表情で堪えています。
十日のうちに集めろという周瑜に対して、孔明さまは三日でじゅうぶんと答えます。おまけに「三日で矢を十万本集めマッスル」と書いた誓約書まで渡してしまう始末。
それなのに孔明さまが矢を調達する素振りは見られない。心配になった魯粛が「どないすんねん」と聞きに行く。
「んー、どうしよ。魯粛ちゃんはどうしたらいいと思う?」
「そら逃げるしかおまへんやろ。三十六計逃げるにしかずや」
「だけど誓約書があるんだよ。逃げたら天下の笑い者だよ。どんな顔で劉備さまの元へ帰れって言うのさ」
「自分で書いといて、よう言いはりますな。しかも十日やのうて三日でええとか何を考えてますのや」
「だって。どうせ周瑜はぼくを殺す気でしょ。それなら十日でも三日でも関係ないじゃん。ねえ、魯粛ちゃん。ホントどうしたらいいかな?」
「せやから逃げるしかないんとちゃいますか。悪いことは言わんからそうしなはれ」
「周瑜のことだから、ぼくが逃げないように要所要所に見張りをつけてんでしょ。結局殺されちゃうじゃん。だから、ひとつ魯粛ちゃんにお願いがあるのだ。この紙に書いてあるものを用意してくれないかな? かな?」
めずらしく媚びるような孔明さまの態度。魯粛は渡された紙に目を通します。
大量の藁。鎧を着せた等身大の藁人形。それを乗せるための船二十あまりと少数の人員。
「こんなもん集めて、どないしますのん? これでうまいこと逃げられるんでっか?」
「いいからいいから。魯粛ちゃん、このことは周瑜に言わないでね。こ、ん、ど、は、か、な、ら、ず」
「バレテーラ!」
お人好しの魯粛が周瑜に内密の話を言ってしまうことなど、孔明さまは始めから計算に入れていました。それにより、ますます命が危うくなることで魯粛の後ろめたさを煽り、こちらの要求を通しやすくする。
ほんま腹黒い男はんやでぇ。
そして約束の三日目がやって来ました。時刻は夜。あたりはとても深い霧に包まれていました。呉軍の陣営近くの小さな船着き場には、孔明さまの指示通りの荷物を積んだ船団が浮かんでいます。そこにあらわれたふたつの人影。
孔明さまと魯粛でした。
「いやあ、孔明はんも運がよろしいなあ。この霧なら追っ手に捕まることもおまへんやろ。うまいこと逃げられるんとちゃいます?」
「何言ってんの。逃げたりしないよ。矢を集めに行くんだよ!」
「矢を集めにって……こんな夜霧の中ででっか?」
「うん。魯粛ちゃんも一緒に行くんだよ。船にはお酒も用意してるからねえ。そういえば、今頃はぼくの偽物が周瑜の手下に捕まってるかな」
「偽物を用意しはったんですか」
「そうそう。目くらましで。ぼくが、この夜霧のナイトクルージングに出かけるってバレないようにね。バレたら邪魔されるかもしれないし、なにより後で知ったほうが周瑜の悔しさも倍増するでしょ」
「……つくづく、えげつない性格してはりますな」
「うふふ。さあ、そろそろ出発しよう!」
孔明さまご一行の船団は川を北へのぼります。そして曹操軍陣営まで近付くとドラを鳴らして大いにけしかけます。
「敵襲!」
部下が曹操へ伝えます。しかし迎え撃とうにも外は深い霧。ドラの音はすれども、船の姿はよく見えない。これでは自軍の船が出せないので、曹操は矢を射るように命令しました。
矢が雨のように孔明さまの船団へ降り注ぎます。その頃孔明さまは屋根の下、安全な場所でお酒を楽しんでいました。
「魯粛ちゃんが集めてくれた藁や藁人形に、どんどん矢が突き刺さってるよ。ここでこうして、お酒を飲んでるだけで矢が勝手に集まるなんて愉快な話だね。曹操が協力してくれてるようなものだよ」
「どえらいこと考えはりましたな。でも晩になって霧が出たからええようなものの、晴れとったら、どうするつもりやったんですか。今の今まで生きた心地がしませんでしたやろ」
「全然。今日の夜に霧が出るって、ぼくは分かってたよ」
「ほんなら……三日でええ言うたんは、それで? そういえば、数日前に夕焼けを眺めとったんは天候を読んどったちゅうことですか」
「うん。あのねえ、軍師なら天候ぐらい読めないと勤まんないよ」
「はあ」
たとえ天候に詳しかったとしても、このような奇策で矢を集めることなど並の軍師には思いつかない。魯粛は孔明さまの神算鬼謀ぶりに、ちょいと身震いをしたのでした。
それから夜も更け空が白々となってきたころ、徐々に霧も薄くなりました。潮時と見た孔明さまは船団に引き上げを命じます。
でもドSなので普通には帰りません。
「はい、じゃあみんなで曹操にお礼言ってから帰ろうねえ。せーの!」
「曹操さま、矢をありがとーー!」
「ちがーう! 普通にお礼を言うんじゃなくて、もっと志村の顔真似でふざけたかんじで!」
「曹操さまwwww矢をwwwあwりwwがとwwうぇwwwうぇwwww」
船団からの大合唱に曹操が歯噛みしたのは言うまでもありません。
「何、あの孔明っていう子! いつか絶対犯す! もう二喬なんかいらんわ。周瑜と孔明まとめて犯す!」
それからそれから。
呉軍の陣営に戻った孔明さま。矢の数はゆうに十万本を超えて大収穫。孔明さまが矢を調達したというしらせが周瑜にも入ります。さすがの周瑜も怒るのを忘れ、呆れ顔。笑みさえ漏らしながら、うずたかく積まれた矢の山を見上げました。
「Holy shit……本当に集めたのか」
今回はそんな周瑜を見つめる、孔明さま会心のドヤ顔でお別れしましょう。
フッフーン♪
魯粛(ホンマえげつな……)
というわけで今回の感想も長いずぇ。
番組は孔明さまが川岸に寄せた小舟の上で、夕焼けの空を眺めているところから始まります。そこへやって来たのは魯粛。
「風流でんな、孔明はん」
「ああ、魯粛ちゃん。うまくいったみたいでよかったね」
はて何のことかと魯粛が首を傾げると、孔明さまは前回周瑜が曹操軍へ仕掛けた謀略について語り出します。
「曹操を騙して、向こうの将軍を処刑させたんでしょ。謀反の疑いがかかるように仕向けてね。その将軍は水上戦に慣れた、曹操軍にとって貴重な存在だったから、今になって曹操は相当後悔してるだろうね。周瑜におめでとうって言っといて」
「へえ、おおきに。言うときますわ(この伝言なら気楽やわ)」
「ていうか魯粛ちゃん、そんな喋り方だったっけ?」
「おとなの事情っちゅうもんがありますのや」
「ふうん。それはそうと、曹操は賢いからねえ。きっと、すぐ周瑜の仕業だって気付いて、今頃カンカンだよ」
「ああ、それは周瑜はんも言うてはりましたなあ」
「ま、怒ったところで、あらたに曹操軍の水軍都督についたのは、水上戦に詳しくない将軍だからね。怖くない怖くない。あっ、このことは周瑜に言わないでね。絶対だよ!」
「なんでですのん」
「えー分かんない? とにかく言ったら駄目だからね」
ふしぎに思いながらも魯粛は孔明さまのお祝いの言葉を周瑜に伝えました。すると周瑜の表情が険しくなります。
「あの性悪猫が。なにが、しれっとお祝い申しあげますだ。どうしてあのふたりを曹操が処刑したことを孔明が知ってる? あいつは蚊帳の外だったろう。孔明は他になんて言ってた?」
魯粛は孔明さまが周瑜には秘密にしておいてね、と言った内容を伝えていいものかどうか迷います。しかし周瑜は同じ呉軍であり付き合いも長い。
ていうか曹操軍が百万だって孫権に言わないでね、と頼んだのに、あっさり約束を破った孔明さまとの約束を守る義理はない。……と考えたかどうかは分かりませんが、今までと同様に、つい内容をもらしてしまいます。
「えっと、曹操が水上戦を知らない奴を水軍都督にしたことを喜ばしい言うてた……ような……気がする……ような……たぶん」
「ファック! 奥様同士の『これ、みんなには内緒なんだけど』みたいな、ご近所さんの噂話レベルに情報が筒抜けとかありえナーイ! どうやって知ったんだよ。やはり孔明を生かしておくわけにはいかん」
「あわわ……(気楽や思うとったのに結局こうなるんかい)。周瑜はん落ち着いておくんなはれ。孫権さまと劉備が同盟を結んでんのに、孔明を殺してしもうたら孫権さまの評判ガタ落ちやないですか。今わてらの敵は曹操でっしゃろ。孔明のことはこの戦いが終わってから、ゆっくり考えなはれ」
「うむむ。しかし今を逃せば、二度と暗殺のチャンスはやって来ないかもしれないんだぞ。こんなに近くにいるのにィ、おまえを殺せないなんて〜♪ どうすればいいのさ、サムバディトゥナーイ♪ Say together!」
「La La La La La♪」(手拍子)
「Love Somebody tonight♪ And I will never neber never……」
「さっすが武勇知略だけやのうて音楽にも秀でた周瑜はんや! 心にジーンとくる、ええ歌うたいますわ。『事件は会議室で起きてんじゃない! 現場で起きてるんだ!』これしかし……って歌うてる場合かいな! 人の話は真面目に聞きなはれ」
「ユーはノリツッコミもできるんだな。頼もしいぞ」
「……とにかく孔明については、先走ったことせんといておくんなはれや」
「分かった分かった。暗殺ってバレない方法で始末するから心配ナッシング」
「全然分かってへんやん」
「はっは。ジョークさ。殺すのは無理にしても、せめて犯したいところだ」
「えっ」
「えっ」
「嫁の小喬はんに言いつけまっせ」
「えっ」
「えっ」
「何それ、怖い」
そんなやり取りの後で周瑜は呉軍の水上訓練の様子を孔明に見せます。甘寧かっこいい。揺れる船の上から矢を次々と的へ命中させて行きます。
腹に一物、ついでに下半身にも立派な一物を持つ[要出典]周瑜が孔明さまに話しかけます。
「どうだい、我が軍の精鋭達は」
「すごいね」
「はー。いっぱい矢が欲しいなー」
「なんなの、いきなり」
「いっぱい! 矢が! 欲しい! なー!」
「いえ、聞こえなかったわけではないので大声で言い直さなくても結構ですよ」
「オーケー、矢はいくらあっても多過ぎるということはない。あればあるほどいい。というわけで孔明は矢を十万本集めたまえ」
「脈略がないにも程があるけど、いいよ」
「ええんかい!」
つっこまずにはいられない魯粛。周瑜は十万本の矢の調達という無理難題を吹っかけて、失敗したあかつきには、孔明さまを処刑する言い訳にするつもりなのですから。
そんな嫌がらせとしか言いようのないお願いを受けた孔明さまは、十人のうち十五人がイラっときた(即座に全員がイラつき、うち五人は後で思い出してもう一度イラっときた)という渾身のムカつく顔を披露します。
孔明さま「十万本? いいよォ」
背後の魯粛も「なんちゅう顔や」と引き気味ですね。しかしさらに後方の兵士達はよく訓練されているのか、イラっときていても無表情で堪えています。
十日のうちに集めろという周瑜に対して、孔明さまは三日でじゅうぶんと答えます。おまけに「三日で矢を十万本集めマッスル」と書いた誓約書まで渡してしまう始末。
それなのに孔明さまが矢を調達する素振りは見られない。心配になった魯粛が「どないすんねん」と聞きに行く。
「んー、どうしよ。魯粛ちゃんはどうしたらいいと思う?」
「そら逃げるしかおまへんやろ。三十六計逃げるにしかずや」
「だけど誓約書があるんだよ。逃げたら天下の笑い者だよ。どんな顔で劉備さまの元へ帰れって言うのさ」
「自分で書いといて、よう言いはりますな。しかも十日やのうて三日でええとか何を考えてますのや」
「だって。どうせ周瑜はぼくを殺す気でしょ。それなら十日でも三日でも関係ないじゃん。ねえ、魯粛ちゃん。ホントどうしたらいいかな?」
「せやから逃げるしかないんとちゃいますか。悪いことは言わんからそうしなはれ」
「周瑜のことだから、ぼくが逃げないように要所要所に見張りをつけてんでしょ。結局殺されちゃうじゃん。だから、ひとつ魯粛ちゃんにお願いがあるのだ。この紙に書いてあるものを用意してくれないかな? かな?」
めずらしく媚びるような孔明さまの態度。魯粛は渡された紙に目を通します。
大量の藁。鎧を着せた等身大の藁人形。それを乗せるための船二十あまりと少数の人員。
「こんなもん集めて、どないしますのん? これでうまいこと逃げられるんでっか?」
「いいからいいから。魯粛ちゃん、このことは周瑜に言わないでね。こ、ん、ど、は、か、な、ら、ず」
「バレテーラ!」
お人好しの魯粛が周瑜に内密の話を言ってしまうことなど、孔明さまは始めから計算に入れていました。それにより、ますます命が危うくなることで魯粛の後ろめたさを煽り、こちらの要求を通しやすくする。
ほんま腹黒い男はんやでぇ。
そして約束の三日目がやって来ました。時刻は夜。あたりはとても深い霧に包まれていました。呉軍の陣営近くの小さな船着き場には、孔明さまの指示通りの荷物を積んだ船団が浮かんでいます。そこにあらわれたふたつの人影。
孔明さまと魯粛でした。
「いやあ、孔明はんも運がよろしいなあ。この霧なら追っ手に捕まることもおまへんやろ。うまいこと逃げられるんとちゃいます?」
「何言ってんの。逃げたりしないよ。矢を集めに行くんだよ!」
「矢を集めにって……こんな夜霧の中ででっか?」
「うん。魯粛ちゃんも一緒に行くんだよ。船にはお酒も用意してるからねえ。そういえば、今頃はぼくの偽物が周瑜の手下に捕まってるかな」
「偽物を用意しはったんですか」
「そうそう。目くらましで。ぼくが、この夜霧のナイトクルージングに出かけるってバレないようにね。バレたら邪魔されるかもしれないし、なにより後で知ったほうが周瑜の悔しさも倍増するでしょ」
「……つくづく、えげつない性格してはりますな」
「うふふ。さあ、そろそろ出発しよう!」
孔明さまご一行の船団は川を北へのぼります。そして曹操軍陣営まで近付くとドラを鳴らして大いにけしかけます。
「敵襲!」
部下が曹操へ伝えます。しかし迎え撃とうにも外は深い霧。ドラの音はすれども、船の姿はよく見えない。これでは自軍の船が出せないので、曹操は矢を射るように命令しました。
矢が雨のように孔明さまの船団へ降り注ぎます。その頃孔明さまは屋根の下、安全な場所でお酒を楽しんでいました。
「魯粛ちゃんが集めてくれた藁や藁人形に、どんどん矢が突き刺さってるよ。ここでこうして、お酒を飲んでるだけで矢が勝手に集まるなんて愉快な話だね。曹操が協力してくれてるようなものだよ」
「どえらいこと考えはりましたな。でも晩になって霧が出たからええようなものの、晴れとったら、どうするつもりやったんですか。今の今まで生きた心地がしませんでしたやろ」
「全然。今日の夜に霧が出るって、ぼくは分かってたよ」
「ほんなら……三日でええ言うたんは、それで? そういえば、数日前に夕焼けを眺めとったんは天候を読んどったちゅうことですか」
「うん。あのねえ、軍師なら天候ぐらい読めないと勤まんないよ」
「はあ」
たとえ天候に詳しかったとしても、このような奇策で矢を集めることなど並の軍師には思いつかない。魯粛は孔明さまの神算鬼謀ぶりに、ちょいと身震いをしたのでした。
それから夜も更け空が白々となってきたころ、徐々に霧も薄くなりました。潮時と見た孔明さまは船団に引き上げを命じます。
でもドSなので普通には帰りません。
「はい、じゃあみんなで曹操にお礼言ってから帰ろうねえ。せーの!」
「曹操さま、矢をありがとーー!」
「ちがーう! 普通にお礼を言うんじゃなくて、もっと志村の顔真似でふざけたかんじで!」
「曹操さまwwww矢をwwwあwりwwがとwwうぇwwwうぇwwww」
船団からの大合唱に曹操が歯噛みしたのは言うまでもありません。
「何、あの孔明っていう子! いつか絶対犯す! もう二喬なんかいらんわ。周瑜と孔明まとめて犯す!」
それからそれから。
呉軍の陣営に戻った孔明さま。矢の数はゆうに十万本を超えて大収穫。孔明さまが矢を調達したというしらせが周瑜にも入ります。さすがの周瑜も怒るのを忘れ、呆れ顔。笑みさえ漏らしながら、うずたかく積まれた矢の山を見上げました。
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フッフーン♪
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