死神放送網

今日は私が子供の頃に経験した、不思議なお話をしたいと思います。

今はテレビの深夜放送が2時3時までありますでしょう？　24時間放送する局もありますよね。
でも昔は0時を回る前に放送が終わってたんですよ。まぁ、私の住んでいる所が田舎だったせいあるでしょうけど。
それは置いといて、どのテレビ局も放送が終わる前は、静かなBGMと共に「以上で本日の放送を終わります」というアナウンスが流れます。そして、その後はザーッと砂嵐。

私は宵っ張りな子供だったので、寝るのは日付けが変わってから、ということもザラでした。
その日もダラダラと0時近くまでテレビを見ていたのですが、眠たくなったのでそろそろ寝ようか、と思ってテレビを消そうとしたんですね。
すると例の放送終了のアナウンス画面になった。
私は何となく「これを見終わってから寝よう」と考えて、そのままテレビを眺めていたのですが、いつもなら砂嵐になるのに、その時は切り替わらないんですよ。
引き続き静かなBGMが流れ、どこかのキレイな景色が映っているのです。たしか緑の深い山麓の映像だったと記憶しています。
それで私は「今日から形式が変わったのかな？」と疑問に思いながらテレビを見続けたんですよ。
そうしている内に画面に変化が起こりました。
景色を背景に、人の名前とその横に年齢が附された白い文字列が、下から上にゆっくり流れ始めたのです。
そしてそれを読み上げる男性の声。
例えば、
○山○夫（74）
○田○恵（58）
こんな感じで、下から現れては流れてゆく人名と年齢を男性の声が淡々と読み上げる。
……ワケが分かりませんよね？
「なんじゃこりゃ」ですよ。しかも、それが結構な量でね。
でも意味不明だけど、どこか興味が湧いた私は面白半分で見続けたんです。
しばらくして、ようやく文字の流れが途切れた。
男性も全ての人名と年齢を読み終えると、あとは静かなBGMが流れるのみ。
そして最後の文字列が画面の上に流れて消えると、再び男性の声が、こう聞こえて来たんです。

「以上が、明日の死亡者です」

私は驚いてテレビに向かって身を乗り出したのですが、画面はそれをシャットアウトするように突然砂嵐に変わりました。
ザーザーと耳障りな音を聞きながら、私は少しの間茫然とするしかありませんでしたよ。
聞き間違いだったんでしょうかね。それにしても、あの放送の意図が分かりません。だけど考えるのが恐ろしい気がして、私はテレビの前から逃げるようにして布団にもぐり込みました。

あれからずいぶん月日は経ちましたけど、同じ放送にお目にかかったことはありません。
でも、今でもたまに思い出しては「何だったんだろう」と不思議なんですよね。
うとうとしていた私が、夢うつつになっていたんでしょうか。
しかし、もし夢ではなかったのなら。
一体誰が何のために。
誰に向けて発信した情報なんでしょうね──。

いえ、そういう恐い噂話がありましたというオチです。
元の話を細部まで覚えていないので、マチカさんが勝手に脚色しています。
マチカさんはその話を聞いた時に、妙におっかなくてサ。
いつまでもテレビを見とったら駄目だと思ったワケです。

だから深夜までテレビを見ることは止めましたよ。
対象がネットに変わっただけですけど。
というオチです。